ブックタイトルBloomLetter125

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概要

BloomLetter125

八重の家に来ていつの間にか十か月が経っていました。窓から見える広い空と樹々の鮮やかな緑、そして現実を知らせてくれる電車の音…こののどかで平穏な暮らしの中でフッと八十七才の過去を振り返る時があります。悲喜こもごも全てが順風であったとは思えないのですが、それなりに必死に前を見つめて歩んで来たように思います。忘れかけていた老後のことにもハット気付き真剣に考えさせられる現実と出会い、その時幸せにも八重の家の御縁をいただくことが出来ました。入居後の不安や戸惑いを感じる間もなく生活にとけこめたのは、職員の方々の行き届いた支えのお蔭です。外出の折り「おかえりなさい」と声を掛けていただく言葉にはふと安らぎを感じる時もあります。栄養のバランスなどを考慮していただいての食事の折りの品々、そしてデイサービスでは、お誕生日会や趣向を凝らしていただいたその行事の数々…皆さまの笑顔の溢れる幸福の一時です…ネこれからもズーッと穏やかに睦まじく心の交流とともに八重の家の全ての皆さまの平安を心よりお祈り致します。感謝をこめて…・入居者さま寄稿欄心の支え川井弘子こころの遊歩道何かを始めることはやさしいが、それを継続することは難しい。成功させることはなお難しい。津田梅子(津田塾大学創立者)作業療法士によるリハビリテーション藤村が泣いた日藤村駿城認知症を患ってしまった方の記憶はどれくらい維持されるのでしょうか。一日くらいは保たれるのでしょうか。いえいえ、正常な人間でも二十四時間経てば記憶の六十五%は失われています。八重桜をご利用いただいている方の中で記憶の保持が一番短い方ですと、一秒から三秒ほどです。先日、ロングステイされている方の娘様とお孫様が面会に来てくださりました。そのご利用者さまの記憶は十秒から十五秒ほどと私は評価していました。ですので、ある程度の会話も成り立ちませんし、不安で怖いのでしょう、険しい表情をされていることが多いです。しかし面会中は終始ニコニコしながら娘様やお孫様の名前を呼んだり、昔はこうだった、どこへ行ったなどの話をされており、ある程度は文脈のある会話をされていたのです。その光景を目の当たりにし、嬉しくて感動したと同時に自分の無力さに情けなくなり、家族様の前でボロボロと涙を流してしまいました。慣れ親しんだ人、家族、昔馴染みの場所、道具などは認知症が進行していっても患者さんご本人にとっては嬉しく、安心でき、脳機能を、記憶さえも復活し、医学的な専門知識をも超越した現象が起きたのです。私の医学的エビデンスを背景にしたちょこざいなケアやリハビリなど足元にも及ばない力がご家族にはあるようです。昨今の高齢者施設は物的、人的な環境を問題視されるようになってきており、社会学部や福祉系、環境系の大学生が「環境問題」であるとしていくつもの論文が書かれています。特に認知症を患っておられる方に言ってはいけないNGワードは多々あります。知らず知らずに使っている方も多いと思いますが、その言葉一つが認知症患者さんの心を痛めつけたり、症状を悪化させているのです。「ご飯まだか?」と言う認知症患者さんに「さっき食べましたよ」はNGワードなんです。怖いですよね。環境問題の職場などと言われないよう精進してまいりますので、今後もよろしくお願いします。(敬称を略します)俳句教室発表句お花見に行こうと思ったら雨が降る田中弘子お花見の時期は雨が多くてハラハラですね満開の桜眺めて妻想う田中鶴太郎夫婦で桜を見に来ていた頃を想い出されている状況がいいですねコロナ禍で桜見物車から米村健桜の満開は、車の中からでも十分奇麗ですよねふと見ると桜の花びら泳いでる明星明子小川に桜の花びらが散って、まるで泳いでいる様に見えますね公園や春風に揺れ桜見ゆ大塩聖三奇麗な桜が目に浮かびます。幸せなひとときですね宇治橋を渡れば桜思い出す西川愛子いつか見に来た想い出の桜が上手く表現されていますね春らんまん花は櫻木人は武士土田瑞枝何かしらたくましい歌ですね発行元株式会社八重桜〒630-8113奈良市法蓮町410番地の2